これから求められる行政と住民のパートナーシップ
 地域生活環境の充実は、ゆとり、安心、多様性のある生活を営むために欠くことのできないものであり、豊かさの実感を支える基本です。これに反して、多くの地域社会で、コミュニティが崩壊し、個々の価値観や環境に対するニーズの多様化が進む中で、地域社会における住民の合意形成を自ら図ることが困難となり、住民は自らの手による住環境づくりの力を次第に失ってきました。
 これからの『まちづくり』は、行政と生活者である住民と、さらに、そこで活動する企業とが一緒になって行う、いわゆる、行政・住民・企業のパートナーシップによる『まちづくり』でなければなりません。今日では、行政、住民、企業それぞれが単独で『まちづくり』を行うことは非常に難しい状態になっています。しかし、この三者が本当の意味でのパートナーシップをとることは理想的なのですが、今日の日本、特に北海道のように行政への依存度が高い地域ではかなりの時間を要するものと思われます。この中で実現の可能性が最も高いのは、やはり、行政と住民によるパートナーシップでしょう。
 最近、『まちづくり』に対する考え方に変化が起きています。行政主導による生活環境づくりに疑問を持つ住民が、自らの手で生活環境づくりを行おうとする動きが各地で見られるようになってきています。この現象は、住民の生活環境づくりにおける新たな主体性の現れと言えるでしょう。住民も行政には頼らず自主的に『まちづくり』を行うまちづくり自主活動グループが各地域に出始めています。その中には、「行政はもう口を出さないでくれ」といったところまで現れています。
 しかし、このような自主的な活動グループにも、やはり限界があります。特に、財政的な面では、どこのグループも苦労しているようです。
 このような住民の行動に対して、行政にも変化が現れてきました。その変化はまだ始まったばかりではありますが、これまで行政が一方的に行っていた『まちづくり』を、住民を巻き込んで行うという考え方に変わってきています。
 これは、行政が住民へ歩み寄り始めた現象と言えます。行政からの住民への歩み寄りの現れとしては、情報公開と住民参加を挙げることができますが、ここで言う住民参加とは、あくまでも行政が主導する『まちづくり』への住民参加であり、住民の自主的な『まちづくり』にまでは至っていません。この住民参加は大きく3つに分けられます。

      @計画段階の参加
      A実施段階の参加
      B管理段階の参加

 また、この参加の内容も、どの程度までの位置づけかにより、結果はかなりの差を生みます。形式だけではない、本当の意味での住民参加を行うためには多くの時間を要することであり、これまでのように、ただ単に住民を加えたという考え方ではうまく進んでいきません。もし、本当の意味での住民参加を進めるなら、今の行政の仕組みを大きく変えなければならないでしょう。
 これからは、行政と住民の活動においてお互いが歩み寄り、それぞれの欠陥を補いつつ協働(共同ではなく、お互い協力しながら行動する)でつくり出していく、いわゆるパートナーシップによる総合創作活動の『まちづくり』であるべきです。お互いが相手の立場を知りながら行動する必要があるでしょう。その場合、双方を結びつける中間的立場のセンターやNPO(民間非営利組織)のようなものが必要となります。例えば、「まちづくりアドバイザー」やそれぞれの地域の個性を生かしながら、全体としてまとめていくコーディネータやプロジューサーが常駐しているような「まちづくりセンター」のようなものです。
 この場合、行政から離れた中立の立場の位置づけが必要となります。これを行政でつくり出せるかが大きなカギとなるでしょう。
 これからは、コンサルタントの役割も重要になってきます。住民と行政のどちらにも偏らない中間的な考え方をもって適切に行動できる能力が要求されます。

 とは言うものの、『まちづくり』とは、大変時間がかかるものであり、今日や明日にできるものではありません。気長に、個人に過度に負担がなく、『まちづくり』行為そのものを楽しめる雰囲気にならなければ成功しないでしょう。

■『まちづくり』の経緯
経緯 行             政 住             民
従来
行政主導型『まちづくり』
要望・要求型『まちづくり』
・行政側が事業を通して行う『まちづくり』

(欠点)
・行政の一方的な事業中心の『まちづくり』に陥る傾向にあります。
・行政が優位に立った気持ちになり住民の『まちづくり』に真剣になって考え難い。
・行政に対して不満な個々の事象を改善するための要望・要求を行う

(欠点)
・『まちづくり』は、行政が全てやることが当然であると思いこみ、行政に対する要望・要求をすることが『まちづくり』であるかのような錯覚に陥る傾向にあります
現在

変化の過程 
住民参加型『まちづくり』
自主活動グループ型『まちづり』
・行政が行う『まちづくり』の過 程で住民を参加させる。
 参加形式 @計画段階の参加
      A実施段階の参加
      B管理段階の参加
・住民参加は、あくまで行政主導の『まちづくり』(事業の場合が多い)の中で、住民の意見を取り入れたり、一緒になってつくり上げていく。

(欠点)
・あくまで、行政が主導ということがどこかにあり、参加が形式的になる可能性があります。
・行政に頼らず自主的に『まちづくり』を行う。
・今までのような行政に対する甘えの構造から脱皮し、自分達だけで『まちづくり』を行う。




(欠点)
・熱心なキーパーソンがいれば成功しますが、長続きが難しい。
・特に財政的な問題で苦労します。
将来
行政・住民一体型『まちづくり』
・行政と住民のお互いの欠陥を補い合い、一緒になって『まちづくり』を行う、いわゆる、パートナーシップによる『まちづくり』

(条件)
・お互いが歩み寄る必要があります。
・中立的な立場で、地域の個性を生かしながら全体としてまとめていくコーディネーターやプロジューサーが常駐するNPO(民間非営利組織)センター的なものが必要です。
 (例)・まちづくりセンター