3.ポンピドーセンター
半ばスラム化していたレアール地区に1977年1月、4年の歳月と10億フラン(約480億円、1991年現在)をかけた全館総ガラス張りの建物が建てられた(図-40,41)(写-145,146)。1969年当時のポンピドー大統領が国家的規模の大事業として現在的芸術創造のためのセンターを造ろうと提唱したところから生まれた。内部は吊り天井式で柱は一本も無い。49カ国681の国際コンペ応募案の中から選ばれた。建築家リシャール・ロジェとレンゾ・ピアノというイタリア・イギリスの全く無名の若い外国人グループの手によるものである。縦横166m×60m、高さ42mの巨大な長方形の地上6階地下2階の建物。正方形を単位に組み合わせたスチールの支柱、電気、換気、水道などの機械系統を内臓した赤、緑、青の鮮やかなプラスチックチューブ、そのチューブを遊泳するような感じで動くエスカレータ等がむき出しになっている。装飾的な配慮は一切なく、むき出し設備配管そのものを美と考えているかのような感じを与える(写-147)。
その外観だけを見ると、建物を建設中の仮設足場のまだ残っている建設途中のような感じを与える。鉄骨の配置はシュールレアリズム(超現実主義)彫刻さながら、ある種の感受性を逆なでする程のもの。階段、エレベーター、エスカレーター、通路、さらに換気・暖房用のダクト、水道、ガスの配管、全てを建物の外側に追い出してしまった結果、各階とも7500平方mの平らなスペースを得ることができた(写-148)。
周辺の建物と極端に異なるため一瞬驚きを覚えるが、前庭の広場では、パントマイム、朗読、モダンバレー、アクロバット等、アマもプロも含めた大道芸人達が集まって競演し、大変賑やかである(写-149,150) 。
センターは一個の文化資産として、文化の普及を促す驚くべき可能性をはらみ、芸術活動と日常生活との相互浸透を容易にするために必要な諸施設を備えている。その事業は4部門に分かれている。
@公共情報図書館
1〜3階にわたっていて、様々な資料に直接触れるところに独自性がある。
(図書館、スライド、映画、ビデオ、データバンク)
A工業デザインセンター
1階・中2階にあり、建築、都市計画、工業デザイン、視覚コミュニケーションを受け持つ。
B国立現代美術館
建物の4〜5階を占め、常設並びに臨時の展示品を通じて1905年から今日にいたるフランス内外のあらゆる形式の
造形美術を紹介している。
C音響・音楽調整研究所
ストラウ゛インスキー広場地下の4階分を占め、音響世界の探求を任務としている。
その他の施設としては次のものがある。
・グランドギャルリー : 6階にあり、テーマを大展覧会用に当てられている
・ガランスホール : 1階にあり、1日3本の割で上映される映画的展示用スペース
・芝居用大ホール
・討論会・集会用小ホール
・書店 |
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図-40:ポンピドーセンター位置図 |
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図-41:ポンピドーセンター平面図 |
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写-145:ポンピドーセンター |
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写-146:ポンピドーセンターのエスカレータの内部 |
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配管がむき出しになっている |
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柱が一本もなく、大空間を確保することが出来る
この時は次に行われる催し物の準備をしていた |
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写-147:ポンピドーセンター |
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写-148:ポンピドーセンターの内部 |
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大道芸でいつも賑わっている |
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写-149:ポンピドーセンターの周辺の建築群 |
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写-150:ポンピドーセンター前庭広場 |
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