高速道路上での住宅建設事例
3.高速道路上での住宅建設事例


(DEGEWO社の概要)

・1920年設立

・ベルリン市管轄
  管理局が市にある

(業務内容)
・主要業務は公団住宅の建設促進。
・ベルリン市の管轄下にあるため、市の住宅建設も行っている。
・ここ3年間は、15、000戸/年くらいづつ建設してきている。しかし、壁崩壊後は状況が変わってきている。
 また、壁崩壊により旧東ベルリン側への建設も可能となり、その面からも状況は変化している。


(組織体制)
・技術部門と管理営業部門の2部構成、従業者数480名

(壁崩壊による問題点)
・建築資材の不足
  東部復興のため西部より資材を調達
・東部の土地所有権の問題
  ナチス時代にユダヤ人から没収し、東ドイツ設立時に国有化した土地。土地所有者が不明のものが多く、信託公社
  が管理することとしている。

・西と東の人の感情の問題
  40年間閉ざされたことで、人の考え方の違いが生じた。

(プロジェクトについて)
・緑地の確保と高密度居住
  壁崩壊までは、限られた土地の中で如何に緑地を確保しつつ、多くの人が居住できる住宅建設が課題であった。
・計画当初は道路沿いに住宅を建設する案もあったが、防音・振動調査。環境調査、収益等の検討結果を踏まえ、最終的
 に高速道路上に住宅を建設することとなった。


(プラン及び建設について)
・鉛直荷重は道路上の柱に流れるように工夫してある。
・高速道路下には2階建ての駐車場を設けた。
・高速道路からの音や振動が伝わらないよう、防音・防振処理がなされている。また、防音壁として高速道路の
 IN・OUT両側に住宅を2棟配置した。

・杭部分は固定されていない(水平移動可能)。
・住宅はメゾネットタイプとしている。
・住民の生活をより豊にするために、休憩スペースを設けている。また、子供達の遊びスペースも十分とっている。
・ゴミ処理はダストシュートが採用され、全て吸引しコンテナによりゴミ捨て場へ送られる。

(アウトバーンの災害対策)
・可燃物搭載車両の通行禁止。
・事故防止のため側壁を湾曲化している。
・排煙装置の設置。

(入居者等について)
・公団住宅のため入居者に年収制限がある(年収30000マルク以下)。
・家賃は入居者の支払分は6マルク/uで、市が21マルク/u助成している(助成打ち切りの見直し案も検討中)。
・入居世帯は上が1、460戸、下が805戸、1.5部屋の住宅があり、老人世帯専用住宅も用意している。
・居住するためには市発行の住宅取得権利書が必要となる。権利書は2種類からなり、居住を急ぐものと一般のものとに
 分けられている。壁崩壊後は東側及び外国人の居住を急ぐ人が増え、権利書が重要となっている。


(駐車場について)
・計画当時は1世帯1台当りの駐車スペースを予定していたが、実際は2世帯に1台当りの駐車スペースとなっている
 (一部建設予定地の取りやめによる)。

・駐車料金は60マルク/台で、駐車場は特に定めていない。

(清掃管理について)
・共用部(廊下・階段等)の清掃は管理会社に委託しており、居住者の負担は1マルク/月程度となっている。

(今後の建設計画)
・今回の統一によって建設用地が広がり、今後は高速道路上の住宅はないものと考えられる。
・首都がベルリンとなったことから、東側の住民が増加することが予想され、建設戸数についても増加すると思われる。
・旧東ドイツの公団は解体しており、東側の住宅建設についてはベルリンの20の建設会社が進めることになる
 (DEGEWOは指導的役割を果たす)。また、東側の住宅環境は悪く、これらの改善・修理が必要となる。
・旧東ドイツの生活水準は低く、東側に建てた住宅の家賃はあまり高くできないといった問題もある。

・ベルリンの住民意識としては、住宅は都市中心部への居住要望が高い。
 
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住宅棟の屋上からの眺め
-115:ベルリン 高速道路上の住宅開発 -116:高速自動車道
   
-117:ベルリン 高速道路上の住宅開発 -118:ベルリン 高速道路上の住宅開発
   
-119:高速道路上の住宅開発 中庭 -120:高速道路上の住宅開発 遊具
   
-121:高速道路上の住宅開発 サマーハウス -122DEGEWOの事務所のある廊下
   
暗い時はランプがついている 住宅棟を支えている基礎は多少の移動は可能
-123:電灯スイッチ -124:住宅棟の基礎
   
壁は絵のキャンパスになっている 緑を大切にしている
-125:旧東ドイツ側にある壁 -126:ベルリン郊外の住宅