ヘルシンキの概要
1.ヘルシンキの概要

(1)都市計画局概要

 a)目的
 都市計画局の仕事は、効果的で健康で美しいヘルシンキの街の開発をするために、計画から開発の枠組みまでを提供する。

 b)概要
 都市計画局は都市計画委員会の基に置かれている。局は、下記の部署で作成される土地利用や交通計画や管理計画に従って責務を果たす。

  @都市構造開発 −−−− 大都市圏開発協力、マスタープラン
  A住宅            −−−−  住宅需要調査、住宅価格、開発地域の改善
               生活環境とサービス
  B業務と工業     −−−−  位置の選定、国の財産(土地家屋)、工業地域
                 中心部とのネットワーク
  C都市環境       −−−−  都市環境組織、開発地域の規模、都市環境の改善
                          レクリェーションと自然環境
  D輸送            −−−−  異なる輸送方式の配置、公共輸送システム
                都心部の道路ネットワーク、郊外部の道路ネットワーク駐車、交通規制、道路                              の安全、交通の環境効果
  E都市計画経済  −−−− 建設コスト、管理コスト(維持)、実行
                        コミュニティー開発
  Fコミュニティー調査 −  主要カ所調査、協力調査、情報交換

 c)土地利用計画フロー
 
 
@地域計画

 地域計画は、複数の市町村をカバーしている総括土地利用計画のこと。地域計画は、地域計画協会によって立案され環境省によって確認される。地域計画協会は、意志決定がそれぞれの市町村の代表者によって行われる市町村結合団体である。

A全体計画(総合基本計画)

 全体計画は、より詳細な計画、建設、土地利用の基礎として、それぞれの市町村によって立案される総括土地利用計画のこと。全体計画は、住宅用地、業務用地、サービス用地、レクリェーション用地、交通用地とその他の用地として予定される地区を示す。全体計画は計画図とそれに関連する規則と仕様書で構成される。

B概要計画

 概要計画は、全体計画ですでにうたわれている土地利用の基本原則とより詳細な計画や開発の調整が要求されているかなり大きな区域を覆っている。概要計画は、建設法には使用されない全体計画と町村計画の間の中間計画である。

C町村計画

 町村計画は、自治体の中での計画、建設組織、土地利用に関する詳細計画である。町村計画は、仕様書と規則で完成されている地図上に描かれている図面と説明書が含まれている。注目するのは、自治体や計画に加わった公共団体に情報を与えたり、最終結論を出す前に言及できる機会を与えるための注意深い配慮がなされている。

D近郊計画要綱

 町村計画でうたわれている説明や規則は、しばしば大切な環境を守のに十分な詳細についてうたってはいない。結果として、新計画システムは、高い質と適切な価格の家と周辺環境を確保するために採用された。品質に関して、このHITAS住宅価格・品質制御システムは、都市のどこの地区の町村計画でも、近郊計画要綱と同時に立案され、また、これは市議会によって承認される。この要綱や計画は、建物配置などのような環境の質に影響を与える様々な決定要素を扱っている。

 d)都市計画決定フロー
 
 
 e)組織
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 f)職員(スタッフ)

 組織の異なった分野にいるスタッフを分析すると、建築家、技術者、調査員、専門家などの計画立案者は、一番大きなグループを作り、それは全体の63%になることが分かる。事務分野を含む係長などの中間管理者は17%になる。専門補助職員や事務職員は36%になる。職員の約52%は大学卒業者で、最も多いのは建築を卒業した者で25.9%になる。

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(2)ヘルシンキの交通政策

 ヘルシンキの自動車の数は年々増えているが、中心部のピーク時の数は増えていない。10年後の予測でもほとんど変わっていない。この理由は、ヘルシンキの交通政策が効いているからである。

 a)公共交通機関

 将来バスの利用が落ちて、鉄道の利用が上がると予想される。これは、鉄道の幹線を増やして、鉄道駅からのバスの利用を考えているからである。公共交通機関の利用状況が良い状態になっているので、自動車の利用があまり増えていない。

 b)駐車場の問題

 現在まで非制限、無制限区域を減らしてきたが、1995年までにはそれをさらに減らそうと計画している。昨年から、いつ時点から駐車しているかを示すことのできるパーキングディスクというものを採用している。これを使うことによって、一日中駐車することができなくなるため、路上駐車の台数は減ってくる。但し、車道から離れた小道のところまではコントロールすることができない。しかし、車道部分は制限を強化しているため、全体としては中心部への車の乗入れを制限していることになる。
 CBDは10マルカ/時間(350円/時間)で高額の料金を取る。その外側は5マルカ/時間、さらにその外側は2マルカと郊外に行くにしたがってだんだん料金が安くなっていく。駐車できる限度時間の色分けがされており、また、パーキングディスクを使用することにより、駐車している時間が明示されるため、だんだんと駐車が制限されてくる。
 駅の重要度によって駐車場の数を制限している。中心部の駅にはほとんど造らないけれども、郊外の駅には造っている。たとえ民間で土地をいくら持っていたとしても、無制限に駐車場を造らないように市はコントロールしている。
 中心部に駐車場を造る場合は、業務関係者の要求によってその数を決めるのではなく、市が中心街の交通量に対応した供給数を算出してその数を決めていく。
 中心部への交通機関の利用は、2/3の人は公共交通機関を利用し、残りの1/3は自動車を利用している。自動車を利用する場合でもショッピングセンターからの物品の搬入搬出は、路上ではなく建物の中で行わせている。
 また、ヘルシンキの公共交通機関は北海道のそれとは異なり、1時間以内であれば何回でも乗れ、料金は一定である。これは北海道もヘルシンキを見習うべきではないだろうか。
 
-21:ヘルシンキ位置図 -22:ヘルシンキ市街図
 
(3)除雪

 a)気温(冬期)
 ヘルシンキの冬期間のデータは次のようになっている。
     範囲         +5℃ 〜 −20℃
     2月の平均気温          −8℃ 〜 −9℃
        温度差        45 〜 75℃ が大きい
     雪対策期間      12月15日 〜 3月31日
     雪の深さ       25  〜 45  p (雪)
                200 〜 250 o  (水)
 冬の気象状況は大きな要因である。

 b)責任分担
 歩道部分は家のオーナーが除雪をする。公共側で行うところは、地区を大きく3つに分け、さらにその地区毎に15の道路割りをする。中心部はその区割りが小さくなる。それだけ除雪を丁寧に行って欲しいという要望がある。
 歩道の部分の雪はグリーンの所に持って行く。車道の雪もグリーンの所に持って行く。ある一定の量になったら家のオーナーはその雪をどこかへ持って行く義務がある。捨て場所は海、空地、下水場などである。

 c)作業員の数
     親方     45 人
     労働者   480 人
          計    525 人

 労働者480人の内の40%はヘルシンキ以外の地域から来る一時的な人員である。従って、夏の間は他の地域で公園の管理等を行っている。作業員は民間から100人くらい、直営は500人のスタッフで行っており、直営で行っている率がかなり高い。

 d)除雪器具
 いろいろな器具を使用しているが75%は市が所有している。25%については民間からリースしている。

       Vehicles & equipment
                                       Own        Hired
      --------------------------------
           trucks                     55           15
           pick-ups                  46
           terrain cars              15
           ( Unimog )
           minitractors              12
           tractors                   43
           multi-use                 65
           Wheel machines
           Wheel loaders            15          61
           graders                    24          16
      ---------------------------------
           total                     310           92
 
-23:責任分担
 
 これらの中には除雪だけに使うのではなく、一般の作業に使用されるものも多くある。

 e)数量とコスト(1990年)

           Quantities & costs 1990
       ------------------------------------------
          street network           1,224 km  (延長)
          area maint.              1,485 ha
          maintenance              4,412      (数)
          contracts
          snow dispos.           128,000     (台 トラック)
          ( loads )

          ( avr.  220000 )

          sand used               41,000 tn
          salt used                3,000 tn
          cost us$            20,000,000
          unit costs        $/sqm  1.25 ドル/u

 ハウスオーナー等と契約して行っているのが4,412件。昨年は雪が少なかったため排雪用に使用したトラックは128,000台。量にすると200万m3になる。長期の平均をとってみると220,000台のトラックになる。凍結防止用に使用する砂が41,000ton。塩は3,000tonになるが塩化物ではない。

 f)メンテのランク分け
 道路メンテナンスも重要度のランク分けしている。

             Street classifications
       ------------------------------
             Class T
                  main streets
                  buss routes
             Class U
          main feeders
             Class V   
                  minor feeders
                  residential roads
             Classification defines
                  quality standerds
                  priority ( urgency )
                     ploughing
                     grading
                     sanding
                     salting

 2割りが高いクラスで主要道路やバス道路、1割りが主要な支線。残りの70%が重要でない道路と住宅地域の道路になっている。このようにクラスに分けることによって優先度を決めることができる。

 g)作業内容

 ランク分けにより作業内容が決定される。

      
  Operational tasks

   -----------------------------------------
     Snow removal
         after snowfalls ( class T also during )
         methods
            ploughing
            sweepers
            blowers
            manually
         class U       6 8 hr
         class U−V   1 3 d
 
        
Snow and ice grading

               when needed ( class T packed snow > 3 cm )
               methods
                   graders
                   tractors
                   loaders

 除雪は通常雪が止んでから行われるが、クラスTの場合は降っている時も行われる。クラスTでは行う時間は6〜8時間。降雪量によるがクラスU〜Vについては3日間ぐらいである。道路にセンサーを設置して、これが感知した情報により除雪車を出動するのではなく、天気予報の情報により出動するという原始的な方法で行われている。作業体制は夜と昼の2つのシフトが採用されている。除雪で問題なのは、北海道でも同じであるが路上駐車してある車である。ヘルシンキでは約5000台もあるらしい。
 道路が凸凹になるが、これについても処理をしなければならない。クラスTの場合は、道路に3cm以上の氷がついている場合には取り除かなければならない。使用する機械はグレーダーやトラックにグレーダーのようなものを取り付けてるものやローダーである。
 砂や塩を使用するのは温度が+−0℃くらいの時に行う。これらを使用する場所は急な坂、バス通り、バス停、十字路、交差点、歩行者道路である。坂が急であるとバスが特に影響を受けやすいのでこれらを使用することになるが、それ以外の理由は歩行者の歩行を守るためである。
 材料は
      washed sand   0 8 mm
             chipping       3 6 mm

   と食卓用の塩を用いる(塩化物ではない)。
 方法はスプレー状になるグリッターを使用するが、階段状のところは手でやらなければならない。今年の冬から塩を溶液状にして巻くように計画しているとのことである。砂と塩を冬期間使用するためには、それらを貯蔵しておくところが必要となるが、ヘルシンキではサイロを6つ持っており、合計で6万トンの容量があるという。これだけあれば冬期間が十分であるが、その外にも予備の場所があると言っていた。しかし、北海道と比べると相当使用していることになる。これだけ使用すれば環境に影響を及ぼさないわけがない。これを説明してくれた時は話には出ていなかったが、環境破壊も起きているらしく、「使用しなくても良いのなら使用したくはない」と言っていた。

(4)スパイクタイヤ

 スパイクの数はタイヤのサイズにより90〜150と決められている。日本車だと90以上はだめになる。突出部分は2mm以上出ては行けない。1本の重量が現在は1.8グラムであるが1994年になると1.1グラム以下となる。使用期間は11月1日〜3月31日まで。乗用車は小さなバンはスパイクタイヤを使用しているがトラックやバスは使用していない。利点はハンドリングが上がること。欠点はわだちが出来ることである。

(5)ヘルシンキの街並

 北海道の旭川市より約10万人多い48万人の人口でフィンランドの首都になっているヘルシンキの中心街は、高さのほぼ同じ鉄筋コンクリートの建築群が並ぶ(-82) 。建築許可で規制がかけられているため、日本のような自由奔放に建てられているのとは異なり、整然とした景観を呈している。景観審査委員会によりチェックを行うため、屋外広告物や派手な色彩の建物はほとんどない。電線類が完全地中化されているため落ち着いた街並を形成しているが、日本の街並を見慣れている者にとってはちょっと物足りなさを感じるところもある。色彩についても、前訪問地のストックホルムと比較すると地味な感じがする。しかし、最近の現象なのだろうか、屋根の上や壁面に日本のものほど大きくはないが、派手な色の広告を見かける(-83) 。この国は、ソ連との戦争で領土を奪われた経験を持っており、また、日本が日露戦争でソ連に勝ったということのせいか日本びいきであり、広告も日本のものを時々目にする。一方、少し郊外の方には新しい住宅団地の建設が行われており、写-84 のようなヘルシンキ中心部では考えられない派手な色彩の建物が目についた。写-85 のように道路を跨ぐ中層住宅も見られる。このような建物は、前訪問地のスエーデンでも最近の団地開発の建物に多く見られていたが、このような建物形式はこちらの国々の最近の流行なのであろうか。中心街の道路標識は、道路中央上部に両側からワイヤーで吊しているのが目につく(-86) 。また、この国は自動車を運転する時はライトを付ける規則になっている。
 
屋根の上の派手な広告
-082:ヘルシンキ中心街 -083:ヘルシンキ
   
ヘルシンキ郊外に建設されている新興住団地 こちらの国々の最近の流行なのだろうか
スウェーデンでも最近の建物の中にはこのようなものがある
-084:ヘルシンキ -085:道路を跨ぐ住宅
 
標識が上部についている
-086:ヘルシンキ