冬   季   施   設

3.冬季施設

 今回の視察は、当初の予定では北方圏の調査ということで、2月に行くはずでした。ところが、予期せぬ湾岸戦争のために6月に延期することになりました。北海道より厳しい自然環境にある北方圏で、冬をどのように暮らしているのか、あるいは、自然環境に対抗するための工夫があるかを調査することにより、北海道にも活かせるのではないかという目的が私にはありました。
 北方圏といっても、気候から言ってスウェーデンとフィンランドが対象となります。冬の厳しい自然環境と言えば、やはり、雪、寒さ、風になります。
 冬の歩行者交通の快適性及び安全性は、雪からの歩行者交通確保が重要なポイントであると言えます。これらの方法は、次のように分けることができます。

 
 
 除排雪方式は、歩行者空間に積もった雪を強制的に排除しようとするものであり、大きくは、除雪方式と消融雪方式とに分けられます。消融雪方式については、今、北海道各地で様々な方法が試みられ又は試みられようとしています。中でも代表的なものは、上の表の通りです。一方、無雪化方式とは、建築物又は、それに付随するもので、歩行者と雪とを完全又は半完全に分離するものです。地下街については、札幌市のみですが、その他のものについては、北海道各地で採用され、あるいは、採用されようとしています。
 カナダやアメリカでは、インナーモール、スカイウェイ、アトリウム等が多く見られます。カナダのカルガリーやアメリカのミネアポリスではスカイウェイがあまりにも有名です。インナーモールやアトリウムについては、カナダでは結構見られ、巨大なショッピングモールもエドモントンでは出現しています。
 私たちは、冬の厳しい時期の活動を阻害する要因として、寒さと雪があり、これらに対する対抗的なものの一つとして、施設で覆うことにより冬季間の活動を促進するものと考えてきました。北欧は、雪については北海道の日本海側と比べると、それほど問題にはならないのですが、寒さが厳しいため、ガラスで大空間を造り、冬季の活動を積極的に行っているものと想像していたのですが、それほど目にはつきませんでした。スエーデンのストックホルムで最近開発中のセードラ駅や中心部の駅、さらには、中心部のホテルで、アトリウムを若干見ることができました。また、セードラ駅周辺の団地開発では、スカイウエイらしきものも一部見ることができました。
 しかし、スウェーデン人の考え方には、この様な施設を造ることに賛成していない向きもあります。スウェーデンの人口規模から言って、施設費にお金をかけても採算が取れないという面と、オープンスペースにすることにより冬よりも夏を楽しむという考え方があるらしい。北海道は、冬でも直射日光は当たります。寒さや雪さえ無ければ、冬でも快適であるという考え方が心の底にはあります。しかし、スウェーデンの場合、冬季間はほとんど直射日光はありません。夏でも北海道と比べると日射量は非常に少ない。少ない日射を夏の間にできるだけ身体に吸収したいと誰もが思います。そうなると、ガラスの覆いをかけて夏の日射を遮るべきではないという考えになるではありませんか。こう考えると、北海道はあまりにも恵まれ過ぎているのではないでしょうか。それをどれだけ多くの北海道人が感じているのでしょうか。
 一方、冬季都市施設の調査対象に挙げていなかったドイツのハンブルグで、意外なことに無雪化施設が多くあることを発見しました。ハンブルグは、冬季間の平均気温もプラスになっていて、雪も多くありません。北海道と比べると、冬は温かいという感じをうけるため、冬季都市施設はそれほど必要ではないと思っていたのですが、中心部のショッピングセンターでは、アトリウム、インナーモール、路上アーケード、建築物内アーケードやスカイウエイまで出現していました。これは、予期せぬことでありました。もしかすると、このハンブルグは、北海道と考え方に共通点があるかもしれません。
 雪の問題については、北欧は北海道に比べるとそれほど多くありません。量が少なくて寒さが厳しいために路面が凍結するため、融雪剤として塩や砂をまきます。この塩や砂が公害となり、悩んでいるらしい。北海道では、消融雪システムが盛んに開発されています。流雪溝、融雪槽、融雪桝、温水パイプ、ヒートパイプ等、高度な技術開発が進んでいます。北海道で盛んに開発され促進しようとしているこの様な融雪方法は、この国でも採用が可能ではないでしょうか。技術はどう見ても北海道の方が上であり、北海道から積極的に働きかける必要がありそうです。
 北海道は、住宅の技術を北欧から学ぶ一方でこちらから技術を輸出していません。もっと積極的にいろいろな技術を売り込むことにより、交流が始まる可能性を大いに含んでいると言えます。
 
セードラ駅入口のアトリウム ヘルシンキ中心部駅のアトリウム
-019:スウェーデン ヘルシンキ -020:スウェーデン
   
ヘルシンキ中心部にあるホテルのアトリウム セードラ駅周辺の団地にあるスカイウェイ
-021:スウェーデン -022:スウェーデン ヘルシンキ
 
ショッピングセンター内にあるアトリウム  ショッピングセンター内にあるインナーモー 建築内アーケード
-023:ドイツ ハンブルグ -024:ドイツ ハンブルグ -025:ドイツ ハンブルグ
  
市庁舎の前にあるガラス張りのアーケード スカイウェイ
-026:ドイツ ハンブルグ -027:ドイツ ハンブルグ