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フ ォ ー ラ ム |
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「まちづくりを考える」
〜 田 村 明 先 生 を 囲 ん で 〜 |
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進 行 : 「まちづくり」とは? → 「まちづくり」に対して描いているイメージ |
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討 論 |
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○「まちづくり」を進めるときの課題・問題点
・「まちづくり」の主体は誰?
・自治体の役割と市民の役割
○「まちづくり」を実践するための手法
・人づくり
・仕組みづくり |
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●田村先生の経歴
・1926年東京に生まれる
・東京大学工学部建築科、同法学部法律学科、同学部政治コ-スを卒業
・運輸省、日本生命、環境開発センターを経て、
1968〜81年、横浜市企画調整部長、同局長、技監
・1981年より法政大学法学部教授
●主な著書
・「都市ヨコハマをつくる」 実践的まちづくり手法 中公新書
・「文化行政とまちづくり」 田村明・森啓 編 時事通信社
・「まちづくりの発想」 岩波新書
●田村先生の紹介
いまでこそ、自治体独自の「まちづくり」を行っている先駆的自治体が増えてきているが、20年前はこうではなかった。国の言うとお引こ事業を執行すれば良い自治体として思われていた。
当時はオリンピックの時期であった。そのため、横浜市には横浜の都心部を通る高架式の高速道路の都市計画決定が地方審議会で審議され決定していた。その当時、横浜市役所に採用された田村先生は、この都市計画決定に従って事業が実施されると、横浜市の都心部が分断されてしまう。横浜の景観、美しさが無くなる。そう思った先生は、その都市計画決定を変更する行動に出たわけです。
その都市計画決定が地方都市計画審議会で審議されたばかりの時であり、当然の如く建設省などから猛反対があった。建設省は補助金を与えるという絶対的権力を握っており、景観や美のことをいう馬鹿な者がいるという噂が飛んでいたという。今でこそ景観とか美という言葉を普通に使うようになりましたが、当時としては、そのような環境ではなかったことは容易に想像出来ます。この言葉を使うようになったのは田村先生からです。
先生の考え方は、学者とは異なり、構想や計画をそのままで終わってはいけない。また、実践をすることにより、いろいろと困難な問題が発生してくるのであり、それを乗り越えなければ真の計画ではない。先生がよく言われるプロジェクト主義というのは、ある目標に向かって実践していくことです。現在使われているような単なる事業の寄せ集めではない。今は先生が主張しているプロジェクト主義の意味するところを間違ってとらえています。「私の主張しているプロジェクト主義というのは事業の寄せ集めではないんです」と言われていました。
その地域にとって何が重要か?、どんな目標に向かって進むのか? このことが先にあって、それを実現するためにプロジェクトを組む。全てが初めての試みであり、今までに経験したことのない難しい問題、課題が生じてくる。それを一つひとつ解決することが重要なのです。
「まちづくり」というひらがなの「まち」を使ったのも田村先生です。このひらがなの「まち」には非常に意味があります。街づくりはハードのことを意味しますが、「まちづくり」.はソフト部分も含んだトータルの「まち」です。
そういう点では「まちづくり」は縦割りの社会では実施できない。縦糸を横糸が結んで総合化していく必要があります。それを田村先生が横浜市のまちづくりで実践していったことは大変なことであります。しかし、先生は「まちづくりは愉しみながらやらなければならない」とも言っています。
「まちづくり」はハードで進められることが多いが、その場合にも次の4つのことを考えています。 @安全であることAふれあいの場(語る場がある)B水、緑があることC歴史があること(歴史の保存) ここには足りないものがあります。それは人間らしさ。人間らしさはハードではできない。いかし、ハードをつくるときにも、それにハート(情熱?思いやり?など)を注ぐことで人間らしさが出てきます。
このことが「まちづくり」にとっては重要なことです。もちろん、「まちづくり」はハードだけではつくれないことでありますが。
横浜には、そのようなハートの部分が随所に見られるという。例えば、くすのき広場には市民が描いている絵タイル(歩道)があります。絵タイルに沿って行くとどこかに到着する → 山下公園入口。市民が描き、道案内をしているのです(観光客)。たくさんタイルのあるところには、周辺に見るものがあるという印。普通なら文字にしたがるが、文字にしなかったのは、知っている人が知らない人に伝えていく。 「まちづくり」とはこういうものではないかという田村先生の考え方によるものです。
田村先生は、地方分権についてもいろいろお話をされました。地方分権ではなく地方主権です。国民が主権者ですが、一人ひとりでは力がないから最小限の政府をつくった。これが自治体です。
地域はトータルな存在です。ある程度の大きさの小さな地域であるべきです。地域は市民性がなければならない。市民参加なら地域に主権(決定権)がなければ反映されない。参加とは要求要望とは違う。参加は双方向であり、責任がつきまとう。自治ということは責任を持つ。決定権のないところは参加にならない。
広域自治体がやるべきことは、空気の問題、道路の問題、河川の問題です。国の権限を北海道がもつ。決定権を持てば道民参加はありえます。
市民は自分で責任をもつ人。住民はそこに住んでいる人。「まち」もそれぞれ個性があってもよい。自分たちがいいと思うことをすべきです。言われた通りのことをやる人は、優秀な自治体職員ではない。もし、それならロボットでもいい。考えてやれば抵抗は出てくる。マンネリにやっていると老化してしまう。新しいことを積極的に行っていくことです。
田村先生の話は、全てに実践が伴っているため一言ひとことに重みがあります。 |