フ  ォ  ー  ラ  ム
「まちづくりを考える

〜 田 村 明 先 生 を 囲 ん で 〜
 
は  じ  め  に
 
 田村明先生は、北海道に何度も来られています。私が初めて近くでお目にかかったのは約20位前だったと思いますが、赤レンガに来られた時です。
 私たちは、建築技術屋として建築や都市計画の仕事に携わっているのですが、仕事をしている中で何かすっきりしないものがあることを感じていたため、何がそういう状態にしているのかを皆んな考えて見ようということから、「うるおいのあるまちづくり研究会」をつくったわけです。これは研究会というよりは勉強会でしたが、この時使用したテキストが田村明先生の「まちづくりの発想」でした。この中で、『まちづくり』とは単なる道路や公園や建物を造るというハードだけではなく、むしろそれ以外の目に見えない部分が「まち」をつくっているということを知りました。そのことを表現するために、田村先生は『まちづくり』という文字を平仮名にしているのですが、まさにそのとおりであると感じました。これで今まで何かすっきりしなかったことが少しは解消された思いがします。
 今年の初めに、市町村都市計画マスタープランの研修会に参加する機会がありました。少し田村先生とお話をしましたら近く釧路市に行くということを聞きましたので、北海道に戻ってから仲間と相談して田村明先生と話す機会を持てないかということになったわけです。先生に連絡しましたところ快く札幌に寄っていただけるということになりました。
 最初は、少人数で『まちづくり』について話し合うことにしていたのですが、田村先生が来るということで是非参加したいという人が多くいたことから、参加してもらう枠を少し拡大することにしました。
 フォーラムの形式についてもいろいろ検討しました。通常であれば、先生に講演してもらい、その後パネラーで話し合うか、あるいは先生に質問するというパターンです。今回は、この一般的なパターンを変える試みをすることにしました。
 『まちづくり』は大変広い分野に及んでいます。焦点を何かに絞らないとまとまらないのではないか? 討論内容が発散してしまうのではなか? とい不安はありましたが、マンネリ化した進め方は止めようということになりました。スピーカーというそれぞれ分野の違う方々から『まちづくり』についてのイメージを語ってもらい、その話の中から討論を進めていく。討論は集まった人たちで行い、田村先生はそれをしばらく聞いていて、途中から討論に加わってもらうという進行のストーリーでした。しかし、討論の結果はどういう方向に進むかは分からない。討論内容のストーリーはないという前提で話を進めることにしたわけです。
 『まちづくり』の分野は大変広いということ、さらに、集まった人数がちょっと多過ぎたということもあって、結果的には思ったようには進みませんでした。

 しかし、田村明先生が話された内容につきましては、大変貴重なお話をされておりますのでお話の内容をまとめることにしました。
 当時の進行は、スピーカーの人たちの話から始まりましたが、この報告書は後半で先生が話された内容を出来るだけ忠実に前半に記述し、フォーラム前半部分のスピーカーの話の内容については要約して後半に記述しました。皆様の『まちづくり』活動の参考にしていただければ幸いです。

 『まちづくり』とは大変広い分野であり、様々な分野の人たちでつくられ、また、つくっていくものであると思います。よりよい「まち」をつくっていくためには、それぞれの分野の人たちが協働、いわゆるパートナーシップでつくり上げなければならないと思います。市民、行政、企業、あるいはコンサルのようは専門家の方々が一緒になってつくり上げていくものであると思います。そのためには、それぞれの分野の人たちが、今回のフォーラムのような同じ土俵で何度も何度も話し合い、それぞれの分野の人たちの世界観をお互いに理解することから始まるのではないかと思います。

                                        
       平成9年7月
田 中 栄 治