情報高度利活用研究プロジェクトに期待すること
田 中 栄 治

 最近のコンピューターは、10年程前のものと比べると数段の進歩があり、パソコンにあっては一昔前の中型コンピューター以上の性能があります。この様な状況の中でパソコンはその名の通りパーソナルコンピューター、いわゆる、個人専用のコンピューターになりつつあります。大型コンピューターに比べ性能的には劣るのですが、小型化のメリットを最大限利用できるため、大型コンピューターをはるかに超えた利用方法が考えられ、また、未知の分野への利用が想定されます。
 莫大な費用と維持費のかかる大型コンピューターではできない分野が急速に広まっています。一人一台のパソコンは、ソフト開発技術の進歩によって、DOS機からDOS/V機でも使用可能となったことによりまして、低価格となり、コンビニストアーでも売られるようになってきました。
 この現象により、多くの人達がパソコンを持つことが可能となったため、パソコン通信が一挙に膨れ上がり、特に、インターネットにおいては、急激な勢いで広がりつつあります。
 こういった現象は、これまでのような限られた人達だけの世界から、視野が一挙に拡大されることになり、新しい世界につながることは間違いありません。
 これまでは、ハードが中心で展開されてきましたが、これからは、高度利活用の方向に展開していきます。
 しかし、なぜ、役所はこのような世の中の流れを感知できないのでしょうか? 役所は世の中の流れから約10年から15年くらいは遅れていると言われています。
 インターネットやパソコン通信で全道の人達が自由に情報交換が出来れば、それぞれの地域で抱えている政策課題も簡単に解決する可能性を充分含んでいるはずであります。
 従来型の政策手法は、国が政策を考えそれらに従って地域の人達は執行していればよかったわけです。しかし、そのような流れで各地域が進んで行ったために、日本全国どこでも同じような「まちづくり」になってしまったのであります。
 これからは、地域が独自で政策を考え、独自にそれらの課題を解決していかなければなりません。
 北海道は特に広大であるため、各地域の情報を交換するのに不利な状況にあります。この欠点を埋めるのが情報ネットワークであります。勿論、数値や画像などの事務的・機械的情報だけが情報ではありませんが、これらの情報が自由に入手・交換できれば、今まで出来なかった多くのことが可能となるでしょう。
 地域の「まちづくり」にとって、インターネットやパソコン通信は大きな影響力を与えることは間違いありません。如何に地域の人達が自由に使えるかが鍵になります。そのためには、広域自治体であります北海道がそのインフラを整備することは大変重要なことであると考えます。
 例えば、インターネットを利用するためにはプロバイザーを経由する必要があります。このプロバイザーを北海道が整備し、各地域の人達は、市内電話料金のみの負担でインターネットを使用できるようにするならば、インターネット使用者も飛躍的に拡大し、各地域の横の繋がりや、世界の国々の人達との情報を交換することができ、政策課題を地域独自で解決することが可能となります。
 広域自治体の役割は、このような、市町村単独ではなかなか出来ないところの整備を行うことではないでしょうか。
 また、そのような地域の「まちづくり」を支援するという観点で情報ネットワークを考えるならば、道庁のこれまでの情報システムの考え方を変えなければならないものと思います。
 例えば、赤レンガネットにしても、どうして、職員誰もが使い易いようになっていないのでしょうか? 専用の内線の設置やモデムを各課がそれぞれ申請するのではなく、情報管理課等がまとめて設置する方法をとらなければ、利用者は拡大されず、結局使用されないままになってしまいます。情報ネットワークは、使用者が多く存在するから価値が高まり、益々活用されるようになるのです。また、庁舎内部だけのネットワークではなく、外部の人達も入り込めるようなものでなくてはなりません。
 インターネットまでいかなくても、北海道のパソコン通信ネットワークをつくり、防災無線や衛生通信を使うことにより、それを道内にいる人が市内電話のみの料金で可能となるなら、これでも道民の情報交流は広がります。 
 従来の考え方をすれば、民間の人が使用することはできないという論理になるのでありましょう。
 このような従来型の考えをする限り、世の中の流れからは、10年から15年以上常に遅れてしまい、市町村あるいは道民からは何も期待されなくなるのではないでしょうか。

 このプロジェクトに望むことは、情報ネットワークを市町村の「まちづくり」という観点から考えてほしいということと、従来型の考え方を変えてほしいということであります。
 道民のためには、北海道が主要な部分の基盤整備をし、情報ネットワークのリーダーをとることを期待したいものです。