自  作  パ  ソ  コ  ン  へ  の  挑  戦
田 中 栄 治

 私がコンピューターと関わり合うようになってから、かれこれ30年近くになる。その間の技術の進歩は想像を絶するくらい早く展開されている。仕事は、コンピューターの専門職ではないので、その間朝から晩までコンピューターと関わっていたわけではない。ましてや、10年前以前では、コンピューターに接することが出来るのは極限られた者であったこともあり、一般の者が、いわゆるパーソナルに使えるという環境が出来上がったのは、ここ5、6年のことであると言ってもいい。
 15、6年前だったと思うが、コンピューターは高価であり、個人が自由に使えないという不便さがあって、自作しようという動きが起きた。いわゆる、マイコンブームの走りである。
 当時は、今考えると非常に原始的なものであったが、8ビット、16ビットマシンを機械語で打ち込もうというレベルである。メモリーはせいぜい1K。今では想像もつかないことである。
 裸同然のボードと点キー程度しかないものに機械語で入力していく。ハードがかなり詳しくないとコンピューター(この段階では計算機と言った方が適切)というものにまでは達しない。
 コンピューターに仕上げるためには、解説書も充分になく未知の世界に手探りで挑戦する当時の自分としては、相当の時間を要するであると判断し、手作りコンピューターをあきらめた。
 しかし、コンピューターに対する思いは強いものがあり、何らかの形で接していたいと常に思っていた。
そういう状態がしばらく続いていた時、ワープロが出現し始め、それとともにゲーム感覚のパソコンが個人でも何んとか手に入る状態で出現してきた。これぞとばかり、完成品のパソコンを購入した経緯がある。
 そのパソコンを使って、自作した測定器を接続して動かしてみようということもやった。
 それから、10年以上も経過すると、パソコンの進歩は、もはやゲームではなく、当時の大型コンピューターを既に越えてしまっている。ここ1、2年の進歩はさらに目まぐるしく進歩している。さりとて、この技術進歩はまだまだ限りなく続いていくものと思われる。人間とコンピューとの共存共栄の姿を考える時、現在は、まだその途中段階の初段階に過ぎない。

 それはともかくとして、自分の入院をきっかけとして、手作りコンピューターへの意欲が急激にわき上がった。パソコンを何台も変えていったが、きりがなく、お金もかかるためコンピューターについて考えることを出来る限り避けていた。ところが、入院をしていると無性にそれまで押さえていたものが切れて、自分で作りたくなってきた。自分の心の中に潜んでいたものが、浮き上がってきたのである。
 最近の手作りコンピューターは以前のそれとは違い、情報も多く、作る環境が整っている。昔のように、ボードそのもから自分で設計してつくる必要はない。作るというよりは、組み合わせである。それぞれの技術的なところは技術の専門の人が設計製造されている。そのマザーボードはそれぞれのコンセプトに従って色々なタイプのものが作られ、売られている。自分がどのような目的で、どのような性格のコンピューターを作りたいかによって、マザーボード、CPU、周辺接続装置を選ぶことができる。マイコンブームの時のようなコンピューターのハードの専門家でなくても、ちょっとした知識があれば、自分に合ったコンピューターを作ることが可能となった。
 手作りコンピューターに関する本を読んでいくと、そんなに難しいことではないのではないかと思うようになり、無性に作りたくなった。
 しかし、とはいえ実際に行動すると、やはり、難しい問題にぶつかる可能性はある。

1.最初の難関

 手作りコンピューターの本を読んでいくと、何んとか作れるのではないかと思い始める。しかし、いざ作ろうとすると、マザーボードはどの機種のものを選べばいいのか迷ってくる。具体的に今、どんな種類のマザーボードがあり、その特徴、特性はどうなっているのか、というこを自分で決めなければならないが、パソコン部品屋に行っても、そのハードは展示されており、ガラス越しにハードの配置は分かるが詳しい内容は、そのボードを購入しなければ分からない。
 購入する前にボードの特徴等の知識を持ちたいところである。概念的に書いている本を読んでいると大きな流れについては分かってきて自分でも作れそうな気にはなる。しかし、いざ、実際に作る段階になると、その現実のハードをイメージしなければならない。視覚で感じないと自分一人で作るところまでには達しない。
 作りたいという思いと、実際にハードを購入するまでに到達するにはちょっと勇気がいる。悩みながら、いろいろなハードの内容が分かる資料が欲しいと思っていたら、本屋で、今出回っているほとんどのハードの内容と写真が載っている本が見つかった。これはしめたと思い早速購入して徹底的に読みあさった。この本は組立方の順序まで写真入りで載っているので、良く分かる。ハードを扱うことが初めての人なら、この本は非常に助かる。


2.組立て時の難関

 ハードの構成は先程の本を徹底的に読むと、自分の作ろうとするハードのイメージと実際に購入するものが見えてくる。
 色々な要素を考慮して、自分の作ろうとするコンピューターのイメージが決まり、部品を購入した。本を見ながら、組み立てていく。昔のことを思えば実に簡単である。電源はケースにあらかじめ用意されているため、しかも、電圧も一定になっているし、コネクターも既に分けられていろのであるから、マザーボードにCPUを挿入し、最近ではビデオボードはAVG?用のものを採用するのが本流らしく、それを購入し取り付ける。ここまでは問題ない。全てを最近のハードを購入するのであれば、そんなに問題なく組立までは出来る。
 わつぃの場合、それまでに持っていらDOS/V機の一部で使用可能なものは使おうと考えた。
CPUは処理速度が遅いので手作りパソコンを実行しようと考えたのであるから、マザーボードとCPUは新しくした。それに伴い、ビデオボードもマザーボードに合うAVG?用のものを購入した。CD−ROMドライブと外付けハードディスク及びMOドライブは当面古いものを使用し、徐々に新しいものに交換し、最終的には、2台のコンピューターが動くようにし、一台を子供用に解放しようと考えていた。
 マザーボードの選択については、最近の傾向でISAカードよりも速度が早いPCIカードが多いものを選んだ。古い機種のCD−ROMドライブと外付けハードディスクはISAスロットに付けるSCSIタイプのものであったので、新しいマザーボードのISAスロットに挿入し、
CD−ROMからシステムを立ち上げる予定であったが、動かない。この様な状態になった時、何処に原因があるのかを判断することは、初めてハードを扱う人にとっては難しい。
 コンピューターを設定する時にBIOSを設定しなければならない。これがまた、初めて扱う人にとっては難しい。
 私は、自分のパソコンをNECの98シリーズからDOS/V機に切り替える時にBIOSについて何度も悩まされた経験があったため、そんなに苦ではなかったが動かない。とにかくシステムを立ち上げる部分が動かないことには始まらない。PC−DOSにCONFIG.SYSをセットしても、SCSIボードを認識しない。しかたなく、SCSIタイプのものは諦め、CD−ROMもIDEタイプのものを購入した。
 システムはとりあえず立ち上がった。しかし、外部機器である、外部ハードディスク、MOやイメージスキャナーが動かない。今まで行ってきた、蓄積データが使えない。PCIスロット用のSCSIボードを購入することにした。ハードディスクは動いたがMOは動かない。古いコンピューターもまだ使えるが、新しくなったコンピューターで今まで使っていたものをそのまま引き継ぎたいというのは誰しも思うことである。このことを解決しない限り前に進めない。
 新しいコンピューターに変えながら前の環境より悪くなるということに納得がいかなくなる。
 所有しているMOはSCSIを選ぶことが分かってきた。しかたがなく、MOに合いようなSCSIをまた買うかどうかという判断をしなければならなくなった。パソコンショップなら、いろんなハードを試してみることができる。しかし、個人はそれを試すことは出来ない。実にじれったいし、いろんなものを読んで知識を蓄えてから判断することになるが、本当にそのハードが合うのかどうかは個人としては賭けに近い。この辺が個人でつくることにためらいを感じる大きなところである。
 もし、勝手な言い方が許されるなら、周辺装置のハードを試せるシステムが出来るなら、例えば、一日単位で貸し出せて、試した結果それを購入した場合には、その貸し出し料金は取らないとか、そういうシステムが出来れば、自作グループは安心して試すことが出来、もっと多くの自作グループが生まれ、コンピューターに接する人たちが多くなるのではないかと思われる。

3.初めての自作する人にとっては、ちょっとした専門家のアドバイスが必要

 自作は上述してる通り、本当に初めての自作者にとっては、スムーズにいく場合は問題ないが、何かちょっとした問題が起きた時には、ニッチもサッチもいかない。こんな時にちょとしたアドバイスがあれば、あまり苦労せず、途中で断念することもなく進ことが出来る。自作者の問題点を解決してくれるホームページや掲示板が欲しい。また、メールであれば、問題があって困っている時に直ぐに答えてくれないという欠点もある。困っている人は、その時にちょっとしたアドバイスが欲しいわけで、電話による110番のようなところがあると、自作派グループはもっと増えるのではないか? パソコンショップはその辺を考える必要があるのではないか?
 相談料を取らずに気軽に相談出来るところがあれば、大いに展開していくであろう。